◆労働契約は、法律上「不要式」の契約とされているため、労働契約の成立には、契約書を要しません。労働者と使用者が、口頭で合意すれば、特に契約書を取り交わさなくても、労働契約自体は、有効に成立します。

◆契約の成立については、以上のとおりですが、労働関係の法規で、書面を要求されているものがいくつかあるので、少し、周辺を整理しておきます(もちろん、これだけではありません)。

①労働条件の明示(労基法15条1項・労基則5条3項)

使用者は、労働契約の締結に際し、労働条件を明示すべき義務を負いますが、その明示方法として、「書面」交付が要求されています。一般には「労働条件通知書」などというタイトルの文書で交付することが多いです。

②労働協約(労組法14条)

労働組合が使用者との団体交渉を行った結果、両者間で一定の合意に達した場合、その合意を労働協約といいます。労働協約は、「要式」の行為とされているため、「書面」にし、これに労使双方が調印しないと、所定の効果が生じません。

③労働者派遣契約(労働者派遣規則21条3項)

派遣元と派遣先が「労働者派遣契約」を締結する場合、取り決めた契約事項を「書面」に記載しておかなければなりません。書面に記載すればよく、契約書の形式で取り交わす必要まではありません。しかし、通常は、契約書を作成する場合がほとんどで、その契約書が、規則の要求する「書面」としての役割を果たすことになります。